m@p Artist

田中奈津子

Tanaka Natsuko

作家インタビューを掲載しました。>>こちら

m@p standard
  • 各回封入予定 ZINE 素材イメージ 

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  • 各回封入予定 ZINE 素材イメージ 

  • 各回封入予定 ZINE 素材イメージ 

キャンバスの上からではなく、自身が受けた時間や空間、歴史や暮らしなどの様々な制約・影響に意識を向け、「描くこと」から絵画を立ち上げてきた田中は、4月よりジャカルタでの生活をスタートさせました。未知なる国で徐々に知識や経験、そこでの暮らしを獲得している田中が描く絵画はどのようなものとなるでしょうか。毎回送られてくるドローイングやコラージュなどによるZINE形式の作品により、田中の進行形の現在をお楽しみください。


 

ロット:3

販売価格:¥55,000(税・送料込) 


私は大学卒業後からいままで京都で絵画の作家として活動してきましたが、この春からジャカルタでの生活がスタートしました。 こちらに到着した日がちょうど大規模社会制限の開始日であり、自分にとってもこの都市においても新しい日常が始まりました。 カルチャーショックとニューノーマルがごっちゃ混ぜの異空間において、まずは言葉を覚えたり、道を覚えたり、乗り物に乗れるようになったり、買い物ができるようになったりと、まるで人が発達していく過程を一つ一つ再確認していくようなプロセスの先に, もう一度結ばれる絵画はどのような風景を描くでしょうか?未知の姿に期待をはずませながら、まずは身の回りのコト、モノを一つずつ記していこうと思います。

 

[m@p]スタンダードでは日々の生活の中で気づいたこと、観察したものを現地で調達した道具や材料とともにテキストやドローイング、コラージュなどで構成されたハンドメイドのZINE形式にてインドネシアからみなさまにお送りしたいと考えています。 作品は印刷物やドローイング等が混在した「ユニークピース・マルチプル」となります。 また画材の購入やプリントにも一苦労する環境の中、zine制作のこぼれ話や現地レポートなども同時に動画配信できればと考えています。

 

■初回封入内容

インドネシアの生活の中で手に入れた紙、布、絵具、ドローイング等を組み合わせ、またテキスト等を添えて制作した手作りのZINEをお送りいたします。

 

 

田中奈津子による動画配信 「Halo! dari Jakarta」

インドネシアで手に入れた素材でZINEを作るvol.2(2021年1月11日掲載)

 

インドネシアで手に入れた素材でZINEを作るvol.1(2020年9月3日掲載)




m@p premium
  • プレミアム参考画像 

インドネシアで見かけるムスリムの礼拝。田中にはその場で使用される色鮮やかな礼拝用のマット「サッジャーダ」が、布や絵が持つ包容力により人々に祈りの場を与えていることが、自身にとっての「キャンバスに描く」行為に重なったといいます。プレミアムでは、インドネシアで手に入れた布素材と描画を組み合わせて、 誰かの「祈りの場」となる作品をお送りします。


 

ロット:1

販売価格:¥330,000(税・送料込み)

 

インドネシアに暮らしているとムスリム達のお祈りの習慣に新鮮な驚きを覚えます。 彼らがお祈りの時に使用する礼拝マット「サッジャーダ」には鮮やかなモスクの絵が施されてあり、 神聖な祈りの場所を用意しています。 布や絵が持つ包容力、そしてそれに重ねる人々の祈りは、 日本人の画家の私にとって「キャンバスに描く」という行為と 重なって見えます。 プレミアムでは インドネシアで手に入れたバティック等布素材と描画を組み合わせて、 エトランジェにとっての「祈りの場所」となる絵画を描いて一枚ずつお送りいたします。

 

参考サイズ :人が座れる程度の大きさ(約100×60cm)。素材は布にアクリル絵具等(予定)

 

 

作家情報

田中 奈津子|Tanaka Natsuko

様々なモノやコトの間に結ばれる、今を生きている人のための絵画を描きたいと思っています。

 

https://natsunique.tumblr.com

 

作家略歴

 

1981年 福岡県北九州市生まれ
2007年 京都市立芸術大学大学院美術研究科絵画専攻修了
2020年〜 インドネシア、ジャカルタ在住

個展

2020年 ANDROGYNOS/Gallery PARC(京都)
2019年 Being series/ギャラリー白(大阪)
into Being /d3 Gallery(北九州) 他
2018年 Open Working "Being series" /京都市岡崎いきいき市民活動センター
2017年 きょうの壺 プレミアム/Gallery PARC(京都)
アブストラクト食う女/ギャラリー島田 deux(神戸)
2016年 繋ぐ、結ぶ、続く、絵/アートスペース虹(京都)
2014年 わたし壷世界/アートスペース虹(京都)
2013年 Fantasy for Adults/アートスペース虹(京都)
2012年 豊かな絵/アートスペース虹(京都)
2011年 デコレーション/アートスペース虹(京都) 

グループ展

2020年 「VOCA展2020 現代美術の展望─新しい平面の作家たち─」/上野の森美術館(東京)
2019年 「ポートレートモード」 黒宮菜菜、田中奈津子/2kw Gallery(滋賀)
2018年  「壺の中のダイアローグ  ―陶と絵のあいだで―」石黒紀子、田中奈津子/ギャラリー恵風(京都)
2016年 二人展「SPECTRA」 鷹木朗、田中奈津子/ギャラリー恵風(京都)
2013年 「悦ばしき知覚」 関口敦仁、山部泰司、松井沙都子、田中奈津子/galerie16(京都)

受賞歴

2015年 マネックス証券Art in the office 2015審査員特別賞

パブリックコレクション

大分県立美術館 京都第二赤十字病院  
 
作品画像
作品画像
作品画像

「ANDROGYNOS」展示風景
(2020, Gallery PARC)

作品画像

左から《ANDROGYNOS#1,#2》

2019 

キャンバス、アクリル 

227×180 cm

「 VOCA展 2020 現代美術の展望-新しい平面の作家たちー」 (2020, 上野の森美術館/東京 ) ©︎上野則宏

作品画像

《ANDROGYNOS#4》
2019 
キャンバス、アクリル 
190×130 cm

作品画像

個展「into Being」展示風景 
2019年

d3 Gallery/北九州市 

©︎四宮佑次

作品画像

個展「into Being」展示風景 
2019年

d3 Gallery/北九州市 

©︎四宮佑次

作品画像

「Being series」展示風景 
2019年
ギャラリー白kuro/大阪 
©︎南野 馨

作品画像

石黒紀子と共作 「陶の壷の絵#1」

2018 

158×325cm

陶土、キャンバス、アクリル絵具

@Tomas Svab

 

 

作家インタビュー

 

─[m@p]について

郵送で作品を送るという形式を先に聞いていたので、インドネシアにいながら、できることは何かをずっと考えていて、それでZINEのことを思いつきました。私は今年の4月からインドネシアにいるのですが、コロナの影響の中でインドネシアでの生活が始まったという特殊な環境にいるので、こういう人は他にあまりいないだろうなと。ポストに届くという形式から、自分の制作・作品がどうというよりは、どちらかというと「ニュースレター」という意識で捉えてプランを考えていきました。ニュースでインドネシアの感染状況は伝わっているかもしれないけれどそれとは違うレベルで、こちらの雰囲気が伝わればと思いました。作家がこういう状態で現地にいて何ができるのか、例えば最初は画材屋さんもどこにあるかわからない状態でしたが、ちょっとずつ言葉を覚えて、市場で買い物ができるようになって、紙が買えて…というような、ものすごいマクロレベルのニュースレターみたいなもの。自己表現とかとは違う作品のあり⽅やものづくりを探すきっかけになれば良いと考えています。

 

 

─ スタンダードについて

現地で調達した布や紙といった材料でZINEをつくって送ります。1回目のZINEの表紙はインドネシア語の練習のためのドローイングです。インドネシア語の単語が覚えられないんです。もう歳なので。なので、文字のテンプレートの定規を買って、それでひとつずつ塗っていくと、さすがに覚えるかなと思って買ったんです。ただ書くだけじゃ忘れてしまうので、塗るという行為があると覚えるのではないかと思って。。四つ切り程度の⾊鮮やかな紙に⾊々な⼤きさの⽂字を配置して書きました。もう少し大きい紙に書いてそれをカットしています。ドローイングの上に、手書きで書いた文字があります。手書きで書いているものは何も見ずに、自分でもうすでに覚えた言葉で書いた文章なんです。下の層にあるのは、覚える時に定規で書いたもので、上の層にあるのはすでに自分のものになったインドネシア語です。そうやって言葉をどんどん自分のものにしていくために書いたものです。

 

 

─ 手習いやお稽古の層が見えておもしろいですね。この装飾は?

セレモニーの時に巻きつける飾りなんだそうです。記念日に自転車にそれを巻きつけて街を走るという習慣があったりします。ZINEをまとめている紐も、日本にはあまりない色だなと思って買いました。表紙の裏は、ストリートアートを写真に撮って、それを描いてみました。もともと字を変形しているようですが、私にはわからないので、抽象画に見えるんですけど、かたちははっきりしているので、おそらく意図があって描いているんだと思います。

 


─ この2枚目は?

赤と白のドローイングです。インドネシアの国旗は「メラプティ」という赤と白の二色です。日本の日の丸と同じ二色ですが、日本だと国旗を飾るということが日常の中では少ないですが、インドネシア人はそこら中に国旗がいつも飾ってあって、いろんなものの色が赤と白でデザインされていたりします。8月17日の独立記念日の時には、みんな赤と白の衣装を着て、体中に赤と白のペイントをしたり、10時になったらモナスという独立記念塔に向かって敬礼をしてました。自分たちの国を愛しているし誇りに思っていて、街中が赤と白で溢れるんですよ。みんな屈託なくて、全身赤と白で。独立は75年前で、日本の終戦記念日と数日違うだけで戦後すぐにできた国ですが、日本が戦後辿ってきた歴史と、その時に生まれた国がこうも違うのかと不思議でした。同じ赤と白の国旗なのにここまで国に対する意識や感覚が違うということがなんなのか。そういうことを思って始めたドローイングで、その一部を切り取って入れ込みました。

 

 

─ このページは裏側に何か描いていますね。

なぜかわからないけど、その落書きが街中にいっぱいあるんですよ。いろんなところにいろんな人が描いているので何かわからないけれど描いてみました。ストリートアートの本場なのであらゆるところに落書きがあるのですが、これがいろんなところに描かれていて、上手い人も下手な人もいます。今回はそんな感じに私も便乗して描いてみました。

 

 

─ 3〜6枚目は?

3枚目は中華街に行った時にお札やお香を置いていて、このお札もきれいなので何かと聞いたら「お祈りをする時に燃やすもの」らしいんですよ。お線香に近いのかもしれません。金箔が貼ってあるのも元からです。これには私は手を加えていません。人が亡くなった時は銀の札を使⽤するらしいです。こちらには中国の方が多くて、富裕層も多いですし、商売をされている人も多いので、インドネシアの中では中国人は経済力があると見なされています。 4枚目は気になったものを切り抜いて貼ったものです。インドネシア人のセンスがわかるような気がしませんか?屈託のなさというか。チョコレートのラベルも貼っているのですが、オランダの植民地だったので、オランダの香りが残るものも結構あって、喫茶店だったりクッキーとかパンの文化もあって、おそらくそのチョコレートもオランダ時代の流れだと思うんです。オランダの文化も残っているし、中華系の文化も入っているし、戦争の際は日本が入ってきたり、もともとのローカルな文化もある。インドネシアといってもものすごく大きい国なので、いろんな地方の人がいて元々の言葉は違うらしいんです。それを独立の際に統一したとのことですが、多文化、多様な層がある国です。寿司のキャラクターも貼り付けていますが、それは市場のかわいい紙が売っているコーナーのようなところで売られていた包装紙です。 5枚目はテキストなんですが、それをコピーするのが大変で。コピー屋さんに行ったんですけど、今コロナで全部ビニールでコピー機を囲っていて、自分でできなくて店員さんにお願いしないといけないんです。インドネシア語でなんとかコミュニケーションとりながらコピーしてもらったのですが、インドネシアはA4ではなくてフォリオ版という大きさでが主流で、微妙に縦に長いんです。はじめA4だと思っていたら少し長くて、途中であれと気づいて。それが結構カルチャーショック、初めに感じた異文化でしたね。 6枚目の折り紙はインドネシアで買った折り紙で、全10色で、それが全色なんですが、なぜ限られた10色でそれを選ぶのだろうというのが不思議です。黄土色などもないですし、蛍光色が3種類ぐらい入っているし。国の色彩感覚がよく表れているなと思うのですが、もしかしたら何も考えずにただ適当にそうしているだけかもしれません…。

 

 

─ 折り紙は折るためのものなのでしょうか。

インドネシアでも折り紙は⼈気のようです。また飾る⽂化も豊かに感じます。日本だとお葬式や開店祝いで花を出すけど、インドネシアではデコレーションされた看板を出すんです。そういったデコレーションが好きみたいで、先ほどの自転車に巻き付けたりする話もそうですが、デコレーションは日常的にみんな、美術好きとか好きじゃないにかかわらず、日常的に親しんでやっていますね。

 

 

 

─ 最後7枚目は?

このあたりに生えているモンステラの葉を描いています。日本のとは大きさと勢いが全然違うし、たくさんあるんで、散歩の時にとってきて型をとって、その型をあてて色を塗りました。こちらではそれだけで生えていることはあまりなく、大きい木に寄生しているように生えています。おそらく庭師の方が植え付けているのですが、木の下の方に、例えばランとかを植え付けたりして木全体が綺麗にみえるように手入れしているんです。この辺りが割と高級住宅街だから、庭師さんが入っているのだと思いますが。

 

 

─ 裏表紙は?

セダップマラムという、よく市場で売っている花なんですが、夜になると香りがするんです。インドネシアではよく買って帰って家に飾っているんです。使っている紙も、日本では見ないグラデーションだなと思って買いました。

 

 

─ プレミアムのプランは?

毎週金曜日の12時に男性はみんなお祈りに行くんです。その時に「サッジャータ」という布を持っていくんですが、この布がいろんな模様があって、鮮やかで。みんな自分の気に入ったものを持ってモスクに行って床に敷いて、モスクが描かれている部分に頭をつけてお祈りをするんです。お祈りする場所を絵1枚が、布1枚が与えているというのが面白いなと思いました。イリュージョンというか、私が絵画に求めているものとすごく近いなと思いました。だいたい60cm×100cmぐらいの大きさで、人が一人座れるぐらいの大きさ。そのぐらいの大きさで何か祈りの場所のようなものを描くことができたらと思っています。みんな肩にかけて、銭湯にいく人のような出で立ちで出かけていくんです。もともとバティックとか染物文化が盛んで、布に関しては色彩や柄がすごく豊かですね。今もコロナでみんなマスクしているんですけど、イスラム教徒なので女性はヒジャブを巻いているんですけど、それとマスクと服の色を合わせたりとか。着るものについてはたとえ貧しい人でもセンス良く着ている。プレミアムでは、インドネシアで手に入れた布素材と描画を組み合わせて、 誰かの「祈りの場」となるような作品をお送りします。

 

 

─ インドネシアのアート事情は?

画材などは市場とか文房具屋とか、最近は画材屋も見つけて少しずつ開拓しています。価格も安くて。絵の具なんかも安いんですけど、日本のものとは色も形状も質も全然違う。インドネシアではストリートアートが盛んです。キャンバスの上に絵を描いて、ギャラリーとか美術館とかで発表するという、いわゆるハイカルチャーみたいなものがあまり根付いていなくて、それよりも道端の落書きとかコレクティヴハウスみたいなものが勢いがあるという印象です。

 

 

─ インドネシア内でもエリアや都市によって違うんでしょうか?

点としてはあって、現代美術館も1つだけあります。あとはジャパンファウンデーションやゲーテインスティテュートとかはあるのですが、シーンがあるかというと私もコロナで動き回れていないのでわからないのですが、作品を売って生きていくということはあまりないような気がします。アートフェアがあって一時的に人が集まってということはあるかもしれないけれど、人が恒常的にギャラリー巡りをするとかそういうことはないような気がしています。例えば京都だと歩いて回れますし、東京でも徒歩圏内にかたまっているということも多いですが、ジャカルタってどこに行くにも車移動で、そこに行こうと思ったら車で渋滞を乗り越えていって、また車で移動して、というのが日常生活すべてにおいてそうなので。ジャカルタについては⽇本のようなシーンはあまり感じられません。ストリートアートやコレクティヴハウスというもののほうがシーンとしては根付いているような気がしています。ストリートアートは隙あらば、という感じであったりします。郊外に行くとすごく鮮やかな、上手いものから下手なものまでいろんな絵や字が溢れています。

 

 

─ 日本における絵画のスタンダードとか様式や方法がものすごくアウェーなんでしょうね。

とはいえ、現在では美術や絵画が、西洋とは違う形でですが、すでにあった暮らしに紐づいていたりして。そのあたりの関係性のズレが面白いです。

 

 

─ 今、制作はインドネシアの住まいでされているんですよね。

そうですね。作業台が少しあるのでそこか、リビングの床にブルーシートを敷いて描くか、どちらかですね。しかも地下の部屋なので光は入らない。でもそれ以前に、そもそもアトリエで描いて、ギャラリーで発表するというのが何やったんかなというのも、こちらにきて半年ほど経ったので、そのことの特殊性みたいなものを感じるようになってきています。

 

 

 

空白